La vie en rose |
まだくらい夜明け前、オレは聖域の中で1番ながめのいい場所へ向かう。 一歩近づくたびに花のにおいが強くなっていくが、ここの住人にとってはこれがフツーらしい。 ようやくお目当ての場所にたどりつくとオレは中に入っていく。 おくの部屋まで来ると立ち止まって一息ついてからそのドアをたたいた。
「・・・早朝から誰かと思えば・・・一体何事?今何時だと思ってる!ミロ!!」 「だって今日はカミュの誕生日だから・・・」
「うん、すきだよ」 「へーそうかい」
「ったく、ここは私が毎日精魂込めて手入れしてるんだよ。それをお前、まさかタダで持っていくんじゃないだろうねぇ。」 「・・・え・・・とぉ・・・」
たまにアイオロスがくれるけど、ここにいたら、そんなのつかうコトもない。
「わーい、やったね!」 「その代わり条件がある」 「ええっ、タダなんじゃないの!!」 「お金じゃないよ」
「え?そんなことでいいの?」 「ああ、簡単だろう」
「はぁ?何を言うかと思えば。そうじゃなくて、どういう子なんだろう、と思ってさ。ほら、何といっても隣の宮だし。」
でもよかった。アフロはカミュにはキョーミなさそうだし。。。って、オレ何でホッとしてるんだろ。
「え?えっと、オレより早く年上なるはずだから10さい。だからキレーな色いっぱいまぜて10本ちょーだい。あ。もちろんフツーのバラをくれよ。でもトクベツなのがいいなぁ。」 「センスのない・・・」 「は?」 「それに10本はダメだ。」 「フランスでは10本以下なら奇数を贈るものだ。それに初心者は色を揃えた方がベターだ。」 「だってバースデーにはそのトシの数をあげるんだろ?」 「へー、そうなの・・・」 「さっきも言ったように10本以下なら奇数はダメ。12本なら感謝の気持ち、24本なら優雅や礼節という意味合いだ。」 「ふーん。・・・ところで『ユーガ』と『レイセツ』ってなんだ?」 「・・・はあ。アイオロスやサガは一体コイツに何を教えてるんだか。」
「言うなればお前に1番必要なもんだよ。礼節ってのは『礼儀と節度』って事だ。」 「・・・・。」 「優雅っていうのは・・・そうだな、私みたいなものだ。」 「あのさ・・・・ぜんぜんイミわかんないんだけど。」 「ムカつくガキだな!簡単にいえば気品があるということだ!」 「わ、わかったよ。ゴメンって。」
「ふん、まったく仕方のない。・・・・その前に1つ確かめたいんだけど」
「うん。」 「それはこの先も、ずっと好きなの?」 「うん。」 「何があっても変わらなく好き?」 「うん。」 「カミュがお前を嫌いになっても好きかい?」 「うん。」 「・・・そうか。」
何かヘンなコトいったかな・・・。
花のコトはよくわからないケド、町で見るものとは全くちがうシロモノって事はオレにもわかる。 あっけにとられボーゼンと庭を見るオレにかまわず、アフロディーテはバラをえらんでいる。
大体そのバラ、オレたちがさわっても本当にダイジョーブなのか!! どうもこのにおいの中に長くいるせいか、考えがまとまらない。 すると彼はいつの間にかバラを切り終えていた。
「わぁ!すっげぇキレイだな!!」
「なぁなぁ、これ何本あるんだ?意味は?」 「36本。数の意味は・・・・・・ふふっ、内緒。」 「えーっっ!!!何だよソレ!!それじゃイミないじゃん!!」 「まあまあ、そのうち判るよ。でも最高にいい数って事だけは保障する。」 「そう?でもさ、何で白なの?」 「いいんだよ、これで。でも色の意味は教えておこうかな。」 「何?」 「『純粋無垢』、今のお前にはぴったりだから。」 「・・・・。」
だからオレはだまってた。
「アカだと何かチガうのか?」 「赤い色は特別の中の特別だよ。」 「トクベツ?」 「そう、カミュみたいに特別な色。」 「んじゃ来年はアカをあげよう!」 「おいおい、それはちょっと飛びすぎだろ。来年は薄いピンクかな。そして年を追うたび赤に近くなるよう贈ればいいさ」 「ふーん?じゃあ、いつになったらアカをあげればいいの?」 「まあ、お前次第だろうけど、まだ先の話かなぁ」
「”あなたの愛は叶うでしょう ”」 「え?」 「トゲのない蕾のバラの花言葉だよ」 「花コトバ・・・」 「言うなれば私からのお守りさ。ほら、早く行って!カミュに1番におめでとうを言うんだろう?」 「あ、ああ。」
バラのイミも、じぶんのきもちも、わからないまま・・・
明日はカミュがシベリアから帰ってくる日だ。しかも日付は2月7日。 だから俺は今年も同じように見晴らしのいい場所に向かう。するとあの変わりない香りに出迎えられた。
「待ってたよミロ。少しは『礼節』を身につけたようだね。今日はいたって常識的な時間帯だ」 「相変わらず『優雅』だな、アフロディーテ」
見るとテーブルにはティーセットが用意されてあった。
「ああ・・・」
アフロに何て説明するべきか考える。・・・どうしよう。 その時だった。
「え?」 「私が教えなくても、もう意味は解るだろう」
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