La vie en rose



まだくらい夜明け前、オレは聖域の中で1番ながめのいい場所へ向かう。

一歩近づくたびに花のにおいが強くなっていくが、ここの住人にとってはこれがフツーらしい。

ようやくお目当ての場所にたどりつくとオレは中に入っていく。

おくの部屋まで来ると立ち止まって一息ついてからそのドアをたたいた。


ドン ドン ドン


するとヨソウどうりフキゲンそうに主があらわれた。いや、フキゲンそうではなくフキゲンのかたまりだったけど。。。


「おはよう、アフロディ−テ。なぁ、庭のものちょっと分けてくれないかとおもってさ」

「・・・早朝から誰かと思えば・・・一体何事?今何時だと思ってる!ミロ!!」

「だって今日はカミュの誕生日だから・・・」


カミュがここ聖域にやって来てまだ間もない。しかも今日がバースデーだと知ったのはつい数日前だった。


「ふーん、まだサガの所にいるから私は彼をよく知らないんだけど・・・。何?ミロはあの子が好きなの?」

「うん、すきだよ」

「へーそうかい」


アフロはあくびをしながら、オレのはなしをタイクツそうに聞いている。


「だからさ、何かしてあげたいと思って」

「ったく、ここは私が毎日精魂込めて手入れしてるんだよ。それをお前、まさかタダで持っていくんじゃないだろうねぇ。」

「・・・え・・・とぉ・・・」


こまった。そういやオレお金もってきてないんだ。

たまにアイオロスがくれるけど、ここにいたら、そんなのつかうコトもない。


「わかった、特別にわけてやる」

「わーい、やったね!」

「その代わり条件がある」

「ええっ、タダなんじゃないの!!」

「お金じゃないよ」


そういやこの前シャカが言っていた。『タダより高いモノはない』とか。こーゆーことなのか?


「何、難しい事じゃない。たまにここに来てカミュとの事を聞かせてくれればいい」

「え?そんなことでいいの?」

「ああ、簡単だろう」


何だ、もっとむずかしいコトかと思った。でもなんでそんなコト聞きたがるんだろ?カミュのコト気になるのか?


「なぁ、アフロディーテもカミュがすきなの?」

「はぁ?何を言うかと思えば。そうじゃなくて、どういう子なんだろう、と思ってさ。ほら、何といっても隣の宮だし。」


たしかにカミュは声をかけにくいけど、ホントはすごいやさしいってオレはしってる。といっても、オレもこの前トモダチになったばっかりなんだけど。

でもよかった。アフロはカミュにはキョーミなさそうだし。。。って、オレ何でホッとしてるんだろ。


「ところでカミュはいくつになるんだっけ?」

「え?えっと、オレより早く年上なるはずだから10さい。だからキレーな色いっぱいまぜて10本ちょーだい。あ。もちろんフツーのバラをくれよ。でもトクベツなのがいいなぁ。」

「センスのない・・・」

「は?」

「それに10本はダメだ。」

「フランスでは10本以下なら奇数を贈るものだ。それに初心者は色を揃えた方がベターだ。」

「だってバースデーにはそのトシの数をあげるんだろ?」


・・・ってムウがいってたぞ。


「全く、どこの国のケーキの話をしてるんだか・・・。いいかい、覚えておくといい。バラを贈るなら意味がある。」

「へー、そうなの・・・」

「さっきも言ったように10本以下なら奇数はダメ。12本なら感謝の気持ち、24本なら優雅や礼節という意味合いだ。」

「ふーん。・・・ところで『ユーガ』と『レイセツ』ってなんだ?」

「・・・はあ。アイオロスやサガは一体コイツに何を教えてるんだか。」


アフロはふかいタメ息をつきながら横目でオレを見た。

「言うなればお前に1番必要なもんだよ。礼節ってのは『礼儀と節度』って事だ。」

「・・・・。」

「優雅っていうのは・・・そうだな、私みたいなものだ。」

「あのさ・・・・ぜんぜんイミわかんないんだけど。」

「ムカつくガキだな!簡単にいえば気品があるということだ!」

「わ、わかったよ。ゴメンって。」


自分だってオレとたいして変わらないガキだろと思ったけど、ここでアフロをおこらせるとヒジョーにマズイ。


「ね、それよりカミュにあげるバラの数おしえてよ」

「ふん、まったく仕方のない。・・・・その前に1つ確かめたいんだけど」


さっきまでとチガって急にマジメな顔でオレを見ると、しずかに話はじめた。


「ミロはカミュが大好きなんだよね?」

「うん。」

「それはこの先も、ずっと好きなの?」

「うん。」

「何があっても変わらなく好き?」

「うん。」

「カミュがお前を嫌いになっても好きかい?」

「うん。」

「・・・そうか。」


アフロはだまりこむと、こんどはオレをジッと見る。

何かヘンなコトいったかな・・・。


「そこまで言うなら、この私の名にかけて協力しよう。ついてくるといい」


アフロディーテはハサミを持ち出すと、オレを庭に案内した。するとそこには見たこともないバラが咲いていた。

花のコトはよくわからないケド、町で見るものとは全くちがうシロモノって事はオレにもわかる。

あっけにとられボーゼンと庭を見るオレにかまわず、アフロディーテはバラをえらんでいる。


「やっぱりこれかな・・・」


そうつぶやくとアフロディーテは持っていたハサミを取り出した。


パチン。


まだ静かな空気の中、ハサミの音だけがひびく。


パチン、パチン・・・


・・・11本12本13本・・・


パチン、パチン・・・


21本22本23本・・・


って、そんなにどうすんだよ!

大体そのバラ、オレたちがさわっても本当にダイジョーブなのか!!

どうもこのにおいの中に長くいるせいか、考えがまとまらない。

すると彼はいつの間にかバラを切り終えていた。


「ほら、私が特別に育てた品種だ。」

「わぁ!すっげぇキレイだな!!」


わたされたのは両手いっぱいの真っ白いバラ。気をつけないと、うっかりこぼれ落ちそうになる。


「そうだろう、シロウトには無理な改良種だ。」

「なぁなぁ、これ何本あるんだ?意味は?」

「36本。数の意味は・・・・・・ふふっ、内緒。」

「えーっっ!!!何だよソレ!!それじゃイミないじゃん!!」

「まあまあ、そのうち判るよ。でも最高にいい数って事だけは保障する。」

「そう?でもさ、何で白なの?」

「いいんだよ、これで。でも色の意味は教えておこうかな。」

「何?」

「『純粋無垢』、今のお前にはぴったりだから。」

「・・・・。」


それはどういうイミだ?とか聞いたら、またぜったいにバカだと言われる。

だからオレはだまってた。


「いつかその色が赤に変わるといいね」

「アカだと何かチガうのか?」

「赤い色は特別の中の特別だよ。」

「トクベツ?」

「そう、カミュみたいに特別な色。」

「んじゃ来年はアカをあげよう!」

「おいおい、それはちょっと飛びすぎだろ。来年は薄いピンクかな。そして年を追うたび赤に近くなるよう贈ればいいさ」

「ふーん?じゃあ、いつになったらアカをあげればいいの?」

「まあ、お前次第だろうけど、まだ先の話かなぁ」


どうやらアフロディーテは1人でおもしろいソーゾーをしているらしい。でも彼はアイオロスやサガとはちがうコトをよくしっている。


「ほら、このバラは私からお前にだ。」


そして最後に彼は『ユーガ』にオレにバラを一本くれた。


「なぁ、これだけトゲがないけど?それにまだ咲いてないよ」

「”あなたの愛は叶うでしょう ”」

「え?」

「トゲのない蕾のバラの花言葉だよ」

「花コトバ・・・」

「言うなれば私からのお守りさ。ほら、早く行って!カミュに1番におめでとうを言うんだろう?」

「あ、ああ。」


オレはアフロに背中をおされカミュのところへ走っていった。

バラのイミも、じぶんのきもちも、わからないまま・・・


***


バラを贈り始めたあの最初の年から5年の月日が流れてた。

明日はカミュがシベリアから帰ってくる日だ。しかも日付は2月7日。

だから俺は今年も同じように見晴らしのいい場所に向かう。するとあの変わりない香りに出迎えられた。


・・・・ただあの頃と違う事があるけど

「待ってたよミロ。少しは『礼節』を身につけたようだね。今日はいたって常識的な時間帯だ」

「相変わらず『優雅』だな、アフロディーテ」


主は微笑んで俺を部屋へ招き入れる。今日は花の香りとは違う香りもする。

見るとテーブルにはティーセットが用意されてあった。


「そろそろ来る頃だと思ってね、ほら座って」

「ああ・・・」


でも今日の俺は別の事で頭が一杯のせいか、正直お茶を楽しむどころじゃない。

アフロに何て説明するべきか考える。・・・どうしよう。

その時だった。


「言わなくても判ってる」

「え?」

「私が教えなくても、もう意味は解るだろう」


彼はクスクス笑いながらとカップにお茶を注ぐ。


「だから今年は” トクベツ "
を育てたよ。ほら」


指差す窓の外を見て俺はその場に立ちつくした。


「今の君にはぴったりだろう?」



そこには一面に赤が溢れていた。








COMENT

9歳くらいのミロがどれだけの漢字と言葉が解ってるのかが書いてて困りました。

同じ年頃でもカミュとかシャカとかムウは語彙も選べるのですが。でも5年後は大分成長してるといいです・・・。***以降は漢字が混じるから読み易いかと(笑)

この最初と最後の間の***部分は主にオフなので割愛で(むしろ文で自分が書けません・・・)

しかし最後をどういう言葉で終わらせるべきなのかを散々迷って書き直しました。

どうもすいません;

ちなみに36本の意味は『愛の告白』です。赤色は『愛の情熱』