カミュ、ミロ、よければわたしも一緒に回っても?」

「もちろん!サガはとてもくわしそうだし、わたしもそうしてもらえるととても嬉しい」

「俺は帰るぜ」

「・・・・ミロ?」

「俺、もうここの絵とか興味ないし、もう帰る」

「ふふ・・・どうやらピエタが不機嫌の理由かな?」

「俺はローマのしか知らねぇよ!じゃあな!」

「! おい待て!ミロ!!・・・・すまないサガ、ミロを放っておけない。失礼する」

「ああ、カミュ、これを」

「え・・・・」


サガが2枚のチケットをカミュに差し出した。


-オペラガルニエ 今夜19時から  ドンファン-


「こ・・・れは」

「最上級の席だ。実は他の者を誘おうと思っていたのだが気が変わった。それを君とミロに」

「でも」

「それから、わたしはここにいるから、是非オペラ座に行く前に寄ってくれるかな?」

「オテル・・・ムーリエ?  サガ、凄い所に泊まっているのだな」

「ひとりでは無駄に広いだけだ。だからどうかカミュ、わたしを今夜たずねておいで」

「ええ。ミロと必ず。・・・ではまた今夜」

「ああ。きっとだよ、カミュ・・・」

ミロを追って去り行くカミュの背に、サガは不敵に微笑んだ。

「ミロと・・・か。どうかな?」


まるで数時間後の事が解かっているかのように、冷静に、その美しくなびく髪を見送りながら心の中でつぶやいた。


「・・・・ほら、お前の迷宮はもうはじまっているのだよ。どちらも選べない。どちらかしか進めない・・・」