今日は新学期です。そして恐怖の宿題提出日です。
「おはよう、皆元気だったかの?さて今日から世にいう新学期だ。気持ちを改め修行するように」
「は〜い」
シオン様からのありがたーいお言葉に皆返事だけは素直にします。
「さて、先月出した宿題だが・・勿論終わらせたのであろうな?」
「勿論です」
「当然」
「はい」
「はーい」
「うん、出来ました〜」
年少組の返事にシオン様は大変嬉しそうです。
「では皆順番に提出しなさい。まずムウよ、お前から」
「はい。」
そう言って宿題を出します。弟子の頑張りに大羊はご満悦です。
「ではシャカ持ってきなさい」
「はい」
出された宿題をこなすのに能力的には何も問題ない彼です。が今回は全員で分担、要はズルをしてるのですが・・・。
「このとうり全て終わらせております」
悪い事をしたという気が微塵もないのはさすがです。
「次はカミュ」
「はい」
カミュにとってもこんな宿題は容易い事です。
「よく出来ておるのう」
「ありがとうございます・・・」
しかし後ろめたい気持ちを持つところがシャカと違うところです。
「ではアイオリア、ミロ、持ってきなさい」
「はーい」「はーい」
2人は揃って宿題をシオン様に見せます。
後ろで見ているアイオロスは少し心配そうです。
「ほーう、珍しく全て終わらせたのだな、うむ、エラいぞ。」
パラパラと問題集を見ながらシオン様は呟きます。
「よく頑張ったなお前達。どうだ?童虎よ、皆イイ子であろう?」
「ふーむ。お前達には感心だのう。ワシがお前達の頃には・・・」
「おや?そういえば皆『自由研究』はどうしたのだ?」
「実はその事なのですが・・・」
ムウが説明しようとしたその時です。
「ちょっと待て、お前達」
突然サガが口を開きました。
「この宿題は本当に自分でやったものなのか?」
「え?」
「全員で割り当てたのではないのか?」
サガの言葉に5人は凍りつきます。
「一体どういう事なのだ?」
シオン様がサガに聞きます。
「お前達が宿題を分担していたという口コミがあったのだが?」
「い、一体誰がそんな事!」
「そうだよ、そんなデタラメを・・・」
「ふ〜ん、デタラメなのか?」
「カノン!!」
突然現われたカノンに年少組はボー然です。
「フフン・・・お前ら昨日の会話を忘れたとは言わせないゾ」
まるで某時代劇のようなセリフです。
「て、テメ〜!よくも!!」
「何でバラすんだよ!」
ミロとアイオリアが逆ギレしそうになった時です。ふと辺り一面の空気が変わります。
「・・・お前達・・・よくもこの私を騙そうとしたな・・・」
シオン様、弟子の加担劇にショックで震えが止まりません。いえ怒りのオーラが見えます。
「え、ええっと・・・。」
「そ、それは」
ムウとシャカでさえ返す言葉が見つかりません。
「聖闘士の頂点に立つゴールド聖闘士が嘘をつくなど言語道断!お前たち覚悟は出来ているだろうな!!」
「教皇!それではわたしも同罪です!」
「!アイオロス?!」
突然のアイオロスの言葉にサガはびっくりです。
「兄さん!!」
「実はわたしもアイオリアの宿題を手伝いました・・・。」
「何だと?!」
シオン様、更に開いた口が塞がりません。
「お前達揃いも揃って、いい度胸だな・・・。」
「まあちょっと待てシオン、彼らにも言い分があるであろう」
それまで黙って見ていた友人が口をはさみました。
「言い分だと?童虎よ、お前どういうつもりだ」
「皆で分担して何がおかしいのじゃ?」
「は?」
「ワシらは皆で戦うのであろう?助けあうのは当然ではないか」
「・・・思い出したぞ、童虎。確かお前は当時全く宿題をしていなかったな・・・。」
「はて?そうだったかのう?さすがにこの歳だと昔を思い出すのも大変じゃ」
ジジイ、しらばっくれます。
「そうだ!いつもいつも私の所へやって来ていたではないか!お前のおかげで何度、前教皇にヒドい目に遭ったことか!!」
大羊当時(大昔)をハッキリ思い出したようです。
「どいつもこいつも!もう許さん!!」
「シオン様!!待ってください!!」
年少組が前に出てきます。
「悪かったと思います!でもコレを見てください!」
ムウが何かを差し出します。
「あーーーーーーーーっっ!!アレ!!」
声を上げたのはアフロディーテです。
「何じゃ、大声を出して!」
急な大声は年寄りの心臓に悪いです。
「シオン様!それ『青い薔薇』です!」
「青い薔薇?」
「ブルーローズだと・・・そんな馬鹿な」
目の前に出てきた一輪の薔薇はまるでギリシャの空のように青いブルーです。
「何だこれは?染めてあるとかではないのか?」
「違います。私達5人の小宇宙で作りあげました」
「何だと?!」
その答えに周りはびっくりです。
「だってさ、アフロディーテのとこに行った時ブルーローズを造るのは不可能な事だって言われたんだ」
ミロが説明を始めました。
「でアフロのトコから苗を分けてもらって、少しづづ小宇宙を注いでいたんだけど、1人じゃ無理だと判った」
「そして私達5人なら可能かもしれないとミロが言ったのです」
「そうそう、俺達が揃えば不可能も可能になると思ったんだ」
「それがこの結果だな」
「そういう事なのです。シオン様・・・。しかし悪い事をしたのは事実です。罰は受けます」
そういって5人が大羊の前に並びます。
「シオン様、彼らは確かに悪い事をしたと思います。ですが『青い薔薇』を造るのはこの私にも大変なのです。ここは何とかならないでしょうか」
アフロディーテが口添えします。
「教皇、私からもお願いいたします」
アイオロスも続いて言います。
「シオン、不可能を可能にするのは皆の力あっての事だぞ。」
「・・・・・。」
周りの説得にシオン様も怒りがおさっまている模様です。
「・・・・判った、認めるとしよう。確かに不可能を可能にしたこの研究は感服した・・」
「え・・・じゃあ・・・」
「が!罰は罰、明日はテストだ」
「えーーーーーーーーーーーーーーっっ!」
「ほお?それともそろって小旅行に行くか?」
「・・・・テストでいいです・・・」
5人は小さく呟きました。ちゃぶ台返しだけはさすがにゴメンです。
「さて、そろそろワシは五老峰へ帰るとするかの」
「そうか、寂しくなるな」
シオン様は寂しそうです。
「まあ、またそのうちやって来る」
そう言って童虎が去ろうとした時です。5人がやってきました。
「童虎さま、どうもありがとうございました」
「ありがとうございました」
「礼をいいます」
「また来てよ」
「今度はもっと色々な話を聞かせてくれよ」
「ウム。お前達もしっかり訓練をするのだぞ。我らが力を合わせれば不可能はないと判ったであろう」
童虎は笑いながら5人に言います。その様子を見てシオン様は思うのでした。
『次の休みはもっと面白い宿題を出すとしよう。』
そして明日からはまたとんでもない・・・いえ修行が始まるのでした。
よーやっと終わり。
追記:この後カノンは今まで以上にガキ共に振り回されるのでした。
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