あきらめた様子でシュラが前に出てきました。
「では私は『紙きり』を御覧にいれたいと思います」
「おい、サガ、紙きりって何だ?」
サガに呼び出されたカノンは高みの見物にきた模様です。
「一枚の紙から色々な形を切り出す東洋の芸だったと思うが・・・。」
「何でもお好きなリクエストをどうぞ、教皇。私に斬れないものはありません」
「ほう、では手始めにアテナが手に持つニケの像ではどうだ?」
「おやすい御用です。」
そう言うと一般人には目にも留まらぬ早業で紙を斬りはじめました。ただし、そこにいる全員には普通の速さで見えてます。
「こんなものでいかがでしょうか?」
「おおっ!」
山羊の得意技を忘れて一同は感心です。
「では皆の聖衣の形を斬ってみよ」
「了解いたしました」
シュラは光速で12体の黄金聖衣を斬っていきます。しつこいですが全員、普通に見えてます。
「終わりました・・・」
そこには紙から斬られた12体の聖衣が並んでいました。大道芸でもやっていけると思われます。
「素晴らしい腕前だ。さすが東洋の似合うだけの事はある」
シオン様の意味不明な絶賛ぶりにも動じることなくシュラが席に戻ろうとすると
「ちょっと待ったぁ!」
その声に一同が振り向きます。
「それくらい俺にも出来るぜ」
蟹が不敵な笑いを浮かべ前に出てきました。
「おい、カミュ。デスってさ先日かくし芸に自信があるみたいな事言ってたろ」
「ああ、確かに・・・でも斬る事はシュラの方が得意な気がするが」
「だよなぁ、デスの得意なのって料理かと思ってたけど・・・」
「もしかして・・・」
「急に何だ、俺が下がってから好きにすればいいだろう」
「俺も似たような芸なんでね、教皇よろしければどちらが上か判定をお願いします」
「うむ、許可する」
「では・・・コレが俺のかくし芸だ!」
「!!!!!」
そう言うと大根と包丁を取り出しました。
「シュラ、お前が斬る事が得意なのは皆知るところだが、コレが出来るか?」
シュルシュルシュル・・・
「おおっ!!」
「何だか判んねーけど凄いよなぁ」
ひたすら感心ミロです。
「アレはかつら剥きという料理人の技ですよ。料理が趣味とは聞いてましたが、やりますねぇ。」
「うむ、確かにあの薄さは凄いな。向こう側が透けて見える」
さほど料理に関心が薄いムウとシャカも納得気味でしたが・・・
「まあ、踊りながらピザ持ってくるお国柄ですしね」
「胃が脳にある民族だからな」
やはり山岳民族とカレーの国の住人には素直に理解できないようです。
「おっと、コレだけじゃないぜ」
そう言うと大根を持ち直し光速で何やら彫りはじめました。
「出来ました」
「これは凄い!中国の宮廷料理に出ていた飾りだな」
「正月で演技モノという事で昇竜を彫ってみました」
またもや将来の因縁相手とは知る由もない蟹です。
「いかがでしょう、教皇?」
「うう・・・む、甲乙付け難いのぉ・・・」
シオン様は板ばさみです。
「少し考えさせてくれぬか、では先に次の者を・・・次はアルデバラン」
「では雰囲気を変える為にもわたしの演奏で」
その手にはデカイ体に似つかわしくないモノが握られてます。
「ヴァイオリン?!?!」
天乃も含め一同驚愕です。
皆が呆けてるのも気づかず静かに演奏を始めました。
「まさか彼にこんな美しく繊細な特技があったとは・・・」
美しさの基準が微妙にズレるアフロです。見た目で判断してはいけません。
「あれは ヴィヴァルディ「ヴァイオリン協奏曲『四季』だ。ソロ・パートのヴァイオリンはテクニック的にも高度でメロディも美しい」
サガの説明に周囲は納得です。そして演奏が終わるとお辞儀をして席に戻りました。
「見事な演奏であったぞ!アルデバラン!!」
「そうだな、とてもアマの演奏とは思えないレベルだった。」
「いい音楽を聴かせていただきました。」
「是非今度ウチの宮に来て演奏をお願いしたい」
絶賛の嵐にアルデバランは照れ笑いをしています。
「『能ある牛はヒズメを隠す』ってヤツだよなぁ?」
「それを言うなら『能あるタカは爪隠すだ』ミロ」
既に前2人の決着はどこへやら状態です。あまりの絶賛ぶりにシュラとデスは呆然としつつ取り残されるのでした。
「よし、次は・・・シャカ、おぬしの番だ」
「かしこまりました」
乙女がいそいそと前に出て行きます。
「さて、おぬしのかくし芸、楽しみにしているぞ」
しょうこりもなくまだ続きます・・・・
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