夏休み子供劇場2005 -その10-

「アーフーロ!」

先日、アフロディーテが薔薇を見せてやると言ったのでミロとカミュは双魚宮にやってきました。勿論夏休みの宿題 『自由研究』の為です。

「やあ、お2人さん、いらっしゃい。ようこそ双魚宮へ」

アフロが宮の中へ案内します。

「ちょうどお茶を入れたところだ。今日はローズジャム入りのロシア風ローズ・ティーだぞ。」

「すごい本格的ですね」

「ふーん、そうなのか?俺リンゴジャムの方が好きなんだけど」

ミロは紅茶の種類などに興味はないようです。

「全くこれだから美を理解しない奴はイヤなのだ。」

「俺だって綺麗かそうじゃないかの区別ぐらいつくぞ。カミュは綺麗だけどぉ〜デスは違うよなぁ・・。」

ミロ、その例えはちょっと違う気もします。

「その意見に否定はしないが、お前、奴がいたら冥府にトバされるぞ」

背後からのいきなりの声にミロとカミュはびっくりです。

「シュラ!!」

「なんでココに?」

「スペイン料理が食べたいので作ってもらおうと思って私が呼んだのだ」

「全く・・・いつも急に言いやがって」

ブツクサ言いながらも薔薇っ子に弱い山羊です。

「シュラの作るパエリアは最高なのだぞv2人とも良かったな」

「パエリアって何だ?カミュ食べた事あるか?」

「ああ、前にフランスで食べた事がある。簡単に言えば魚貝類入りのサフランライスかな」

「フランスも美味しいからな。前に派遣された時に食べたパンとケーキは最高だったv」

アフロがその時の事を思い浮かべます。

「デスのイタリア料理もすごく美味しいがな」

シュラが言います。

「なあなあ、ギリシャ料理も同じくらい美味しいと思うだろ?」

ミロのセリフに3人が黙ります。

「ほら、ミロ!今日は薔薇の研究で来たんだぞ!」

「そうそう、新種の薔薇を研究してるからそれも特別に見せてやろう」

カミュとアフロが話題を変えます。

「じゃあ料理が出来る間、お前らはしっかり『自由研究』しろよ」

「はーい」

***

「すごい薔薇の庭だ・・・綺麗だな」

「フフ、ありがとう、では基本からだ。薔薇はバラ科バラ属。原種の薔薇は、世界中に約200種ほどあるといわれている」

「ふむふむ」

「そして現在は2万品種を超えるまでになっている」

「へー」

「何よりギリシャ神話では美の神アフロディーテに捧げられた華なのだ」

『それって自画自賛なのか?』『実はそれが1番言いたかったとか』

内心ちょっと思うミロとカミュです。

「なあアフロー、さっき言ってた研究って何なのさ?」

「ああ、実は薔薇創り名人のこの私でさえ難しい事なのだ」

「へえ?」

「実は『ブルーローズ』を創っているのだが、なかなか思い通りの色が出なくてな」

「ブルーローズ??何だそれ?」

「その名の通り青い薔薇だ。薔薇は紀元3千年前くらいから栽培が行われていた植物で膨大な品種があるが、元々青の色素がない。なので色んな青い花とかけ合わせていくのだが、かなり難しい事なのだ」

「ブルーローズは『不可能な事』という意味にも使われる程の幻の薔薇だ」

「さすがカミュはモノをよく知ってるな。ミロ、あんたも少しは本を読みなさい」

「へいへい。でもそれが咲かせることが出来たら?」

「意味も『不可能を実現する事』に変わるかもしれない」

「世界中で研究されてるが、まだまだ青色とはいえないのだ。まあ時間も費用もかかるし仕方ないのだが。」

「ふーん」

「ほら、あんた達はこっちの薔薇でも研究しなさい、手塩をかけて育てたのだぞ」

そう言ってアフロは2人を別の薔薇へ案内します。でもミロはブルーローズが気になって仕方がありません。

「おや?パエリアが出来たようだぞ、2人とも。」

アフロはミロとカミュを呼びます。

「どうしたミロ?行くぞ。」

珍しく食べ物につられずうわの空です。

『不可能な事かぁ・・・』

ミロはぼんやりと思うのでした。

***

双魚宮からの帰り道のことです。

「さすがアフロディーテが美味しいと言ってただけはある。美味しいパエリアだったな、ミロ」

「うん・・・そうだな」

「アフロディーテお手製ジャム入りの紅茶もとても美味しかった」

「まあね・・・」

「?ミロどうかしたのか?お前何かヘンだぞ」

「え?そう?そんな事ないさっ!あ、俺用事を思いだしたから帰るよ。じゃあまたな、カミュ!」

「あ、ああ・・・」

そう言ってミロは自宮へ戻って行きました。

「やっぱりおかしいな・・・」

残されたカミュは思います。

「まさか頭の使いすぎ?!・・・なワケないか、アイツに限って」


続く。

そろそろヤバいです。本当に間に合うのか?!年少組!
今こそ小宇宙を最大に燃やすべきです!
宿題期限はあと10日